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日本禁煙科学会誌

【禁煙科学 2008】

ISSN 1883-3926
禁煙科学
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日本禁煙科学会学会誌「禁煙科学」誌(2008年発刊分)の概要を紹介しているページです。
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禁煙科学 vol.2(4) 2008.12禁煙科学 vol.2(3) 2008.08禁煙科学 vol.2(2) 2008.04禁煙科学 vol.2(1) 2008.01

■禁煙科学 vol.2(4) 2008.12

    pdf(3201kbyte) :http://www.jascs.jp/jascs_kaiin/kinen_kagaku/007_2008/kinen_kagaku_02-4.pdf
     
 
【総説】歯科医療者への禁煙教育の重要性
王 宝禮
 
【短報】初診時 SDS スコアは禁煙達成成否の強い独立決定因子である
和田 啓道
長谷川浩二
 
【原著】全国国立大学法人における喫煙対策調査(2006 年度調査)
中井久美子
 
【原著】電子メールを用いた禁煙後の体重コントロール支援プログラムの開発
        −禁煙者へのアンケートとインタビューより−
海老原泰代
 
【原著】大学禁煙化プロジェクトにおける喫煙大学生への禁煙支援介入の成果
 
中井久美子
       
【総説】
       歯科医療者への禁煙教育の重要性
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王 宝禮(松本歯科大学歯科薬理学講座・附属病院口腔内科)

はじめに
 喫煙対策が遅れていた日本でも、受動喫煙防止を定めた2003年の健康増進法、2005年の世界保健機構(WHO)たばこ規制枠組条約(FCTC)、喫煙関連疾患を扱う9つの医・歯学会が合同で作成「禁煙ガイドライン」と、国ならびに学会の喫煙問題に対する取り組みが本格化した。ついに、2006年からは「喫煙は病気、喫煙者は患者」という考えのもと、医科においては保険適用による禁煙治療が可能になった1)。
 喫煙者の多くはまだ喫煙を趣味・嗜好ととらえ、「喫煙は病気」という認識は薄いようである。しかし、喫煙はやめようとしてもやめられない「強い依存症」となり、喫煙者はタバコを吸い続け、心臓病・肺がん・歯周病など様々な病気にかかりやすくなる。つまり、喫煙はう蝕・歯周病・高血圧症・糖尿病などと同じ生活習慣病の一つなのである。喫煙が、口腔疾患の第一のリスクファクターと捉える必要がある2)。
 口腔の健康のケアを専門とする歯科医師、歯科衛生士は、患者が歯科診療室に訪れた瞬間から喫煙者であるかどうかが判る。日々の臨床の中で我々は、喫煙による口腔疾患への悪影響と禁煙の効果を直接感じとってきた3)。それゆえ、我々が歯科保健医療専門職である限り、積極的に喫煙対策を推進する役割を担い禁煙支援する力を養っていく必要がある。
       
【短報】
       初診時 SDS スコアは禁煙達成成否の強い独立決定因子である
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著者名: 和田啓道*1、長谷川浩二*1、寺嶋幸子*2、佐藤哲子*1、井上美鈴*1、飯田夕子*1、山陰一*1、北岡修二*3、森本達也*1、藤田正俊*4、島津章*1、高橋裕子*4
所属機関名: *1(独)国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター、*2(独)国立病院機構 京都医療センター 健診センター、*3京都大学大学院医学研究科 人間環境科学専攻、*4奈良女子大学 保健管理センター

背景:近年の喫煙率の傾向として、男性の喫煙率は低下しているのに比べ、20〜30歳代の女性の喫煙者率は増加向にある。これまでの先行研究において、女性のニコチン依存は、喫煙本数を主体としたFagerstr?m Test for Nicotine Dependence(FTND)等で評価されており、ニコチン依存は低いとされてきた。一方2006年より健康保険適用の禁煙治療が制度化され、ニコチン依存症の診断にTobacco Dependence Screener(TDS)が使用されていることから、FTND、TDS、喫煙本数の少ない若年者向けに開発されたHooked on Nicotine Checklist(HONC)の一部を用いて20〜30歳代の女性喫煙者のニコチン依存の現状を分析することと禁煙に対する意思との関連要因を検討することを目的とした調査を行った。
方法:2007年7月から2008年4月の間に、国立病院機構京都医療センター禁煙外来を新規受診して同意した患者65例(連続症例)を対象にSDSテストを施行した。精神疾患の既往、精神科あるいは心療内科受診歴のある患者は除外した。SDSスコア39点以上47点以下を正常/神経症境界、48点以上を神経症/うつ病とした。
結果:禁煙成功率は正常群 (n=29) 69%に対し、正常/神経症境界群 (n=17) 35% (P = 0.030)、神経症/うつ病群 (n=19) 21% (P = 0.002)と、うつ状態の程度に従い禁煙成功率は顕著に低下した。初診時の性別、年齢、喫煙開始年齢、喫煙年数、1日の喫煙本数、ブリンクマン指数(喫煙本数/日×年数)、ニコチン依存度の指標であるFTNDスコア及びTDSスコア、禁煙の自信度、SDSスコアを変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果、12週後の禁煙成否を規定する唯一の独立因子がSDSスコアであった(P = 0.032, OR: 0.927, CI: 0.866-0.993)。
結論:初診時のうつ状態は短期的禁煙成功率に深く関連し、SDSスコアは短期禁煙達成成否を規定する最も強力な因子であった。潜在的うつ状態の存在が禁煙の最大の妨げであることが明らかとなった。
       
【原著】
       全国国立大学法人における喫煙対策調査(2006 年度調査)
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著者名: 中井久美子*1、高橋裕子*1*2*3、清原康介*4、苗村育郎*3*5、立身政信(岩手大学)3*6*、寺尾英夫(大分大学)*3*7、吉原正治(広島大学)*3*8、杉田義郎(大阪大学)*3*9、守山敏樹(大阪大学)*3*9、鎌野寛(香川大学)*3*10、森岡洋史(鹿児島大学)*3*11、池谷直樹(静岡大学)*3*12、辻井啓之(奈良教育大学)*3*13、山縣然太郎(山梨大学)*3*14
所属機関名: *1奈良女子大学大学院、*2奈良女子大学保健管理センター、*3国立大学法人保健管理施設協議会 喫煙対策調査研究班、*4京都大学、*5秋田大学、*6岩手大学、*7大分大学、*8広島大学、*9大阪大学、*10香川大学、*11鹿児島大学、*12静岡大学、*13奈良教育大学、*14山梨大学

目的:健康増進法では、受動喫煙を防止すべき場所として「学校」が冒頭にあげられ、大学においても受動喫煙を防止する必要がある。全国の国立大学法人の保健管理施設からなる国立大学法人保健管理施設協議会にて2006年10月に国立大学法人における喫煙対策調査を実施した。
方法:国立大学法人保健管理施設協議会の会員(国立大学法人保健管理センター施設長)あて、FAX送信・郵送による自記式アンケートを依頼した。調査項目は、大学の喫煙対策の現状、学内でのタバコ販売、喫煙対策推進のための学内組織、喫煙対策実施後のメリットと問題点、学生への教育、禁煙支援状況等であった。
結果と考察:べての国立大学法人から回答を得た(回答率100%)。すべてのキャンパスが敷地内禁煙と回答したのは5大学、一部のキャンパスが敷地内禁煙との回答は12大学であった。本部キャンパスの建物内は86国立大学法人中44大学、建物外は7大学が禁煙であった。38の国立大学法人(44%)では学内でタバコの販売をしていなかったが、一方未成年が学内にいるにもかかわらず自動販売機を設置している国立大学法人が36大学にあがった。
67校(78%)の国立大学法人において、入学時オリエンテーションや特別講義、通常講義などの機会を通じて学生への喫煙防止教育や禁煙についての教育を提供し50大学(国立大学法人の70%)が喫煙学生への禁煙サポートを提供し、37大学においてニコチンパッチを用いた禁煙サポートが提供されていた。
結論:国立大学法人での喫煙対策は建物内禁煙にとどまるものが多く、敷地内禁煙化は5大学のみであったことから、更なる喫煙対策の推進が望まれる。
       
【原著】電子メールを用いた禁煙後の体重コントロール支援プログラムの開発
          −禁煙者へのアンケートとインタビューより−
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著者名: 海老原泰代*1、三浦秀史*2、高橋裕子*3
所属機関名: *1奈良女子大学大学院人間文化研究科共生自然科学専攻、*2禁煙マラソン、*3奈良女子大学

背景:近年、公共の場での受動喫煙防止や学校、公共施設の敷地内禁煙などの広がり、禁煙外来指導の保険診療適用など、禁煙に挑戦するための社会環境は整いつつあるといえる。  禁煙にいったん成功してもそのあと体重増加により再喫煙する人は多い。しかし、禁煙後の体重コントロール支援の方法は確立されているとは言えない。本調査では禁煙後の体重コントロールの為のプログラム開発を目的として、禁煙後の体重増加について禁煙継続者へのグループ・インタビューとアンケート調査を試みた。さらに調査に基づき、写真付メールを利用した食事相談を含む禁煙後の体重コントロール支援プログラム開発を試みたので報告する。
対象:インターネット禁煙マラソンに参加し、調査時点まで禁煙が継続している男性11名、女性7名。
方法:
1.アンケート調査:禁煙マラソンのイベント参加者18名に調査目的や個人情報保護や拒否の機会を記載した説明文を添付したアンケート用紙を配布し、即日回収した。アンケートは無記名とし、質問表の内容は、性別、身長、喫煙時体重、現在体重、禁煙年数、減量のために必要と思われる情報についてであった。
2.インタビュー調査:アンケート調査を実施した18名に対して、2〜3人ごとのグループ・インタビューを実施した。各グループに対し、インタビュアー1人が対面して質問を行った。質問内容は、禁煙後の体調変化、自分の現在の体重の捉え方、食事や運動による減量の実施有無、減量についての不明点の有無とし、特に感覚的な変化や考え方の変化など、詳しく聞き取りをした。対象者へは研究の目的を書面で説明し、同意書を得た上で実施した。なお本研究は奈良女子大学疫学倫理審査委員会の承認を得て行われた。
結果:禁煙マラソンの「イベント参加者18名全員が調査に協力した。 禁煙後から現在まで体重の平均変化量は男性2.4kg(SD4.1)、女性3.3kg(SD4.8)、禁煙期間は平均で男性8年4か月、女性6年5か月であった。
 減量に必要な情報については質問票により18項目の運動・食事に関する項目についての必要度を5段階にわけ、得点付した。男女共「自分に必要な食事量について」が最も得点が高かった。一方、「運動サークル紹介」「アルコールのカロリー」の情報が得点数が低かった。
プログラム構築:本研究では栄養士からの個別アドバイス提供、さらに減量支援情報を電子メールにより提供する。単に情報提供のみではなく個々人ごとに対応した食事コントロールの支援を目的とした個別減量支援プログラムを開発した。
結論:禁煙継続者のアンケートとインタビューから、電子メールでの個別食事相談を取り入れ、禁煙後の体重コントロールの支援プログラムを開発した。
       
【原著】
       大学禁煙化プロジェクトにおける喫煙大学生への禁煙支援介入の成果
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著者名: 中井久美子*1、高橋裕子*1、清原康介*2
所属機関名: *1奈良女子大学、*2京都大学

 「大学禁煙化プロジェクト」でのニコチン代替療法と双方向性のメール支援を利用した大学生への禁煙サポートプログラム「パッチ&メール」の禁煙成果について報告した。これは日本で初めての大学生への禁煙支援に関する多施設共同研究であった。
プログラム概要と方法:「パッチ&メール」は各大学の学生健康管理部門がプログラムに参加する禁煙希望大学生を募集し、一定のプロトコールに従って禁煙治療を行う。各大学の学生健康管理部門では、プログラムへの参加学生を募集し、一定条件を満たす学生に対してパンフレットや学生健康管理部門スタッフによる面談のほか、必要に応じて無料ニコチンパッチと半年にわたる大学生専用メール禁煙サポート(カレッジ禁煙マラソン)を提供し、プログラム参加後6ヶ月での禁煙状況を評価した。評価は呼気中一酸化炭素濃度測定を原則とし電話やメール等追跡可能な方法を併用した。学生健康管理部門において記入した「学生追跡票」に基づきプログラム参加後180日以上経過した参加者を対象として禁煙成果を分析した。
結果:2003年10月〜2005年10月までの2年間に「パッチ&メール」に参加した学生933名(59大学)のうち、調査時点(2005年11月〜2005年12月)でプログラム参加後180日以上経過したのは376名(男277名、女99名)であった。プログラム参加180日後の断面禁煙率は、追跡不能者を喫煙とみなす厳しい判断基準では男子学生25.3%、女子学生の24.2%であり、追跡不能者を除外する判断基準では男子学生44.6%、女子学生35.3%であった。男子学生の120人(43.3%)、女子学生の31人(31.3%)が半年後に追跡不可能な状況であった。
結論:本プログラムは海外での大学生への禁煙支援プログラムに先行して開発・提供されたが、海外に比較して本プログラムの禁煙成果は遜色ない結果であった。海外プログラム同様、追跡不能者に対しての対応は今後の重要な課題である。
禁煙科学 vol.2(4) 2008.12禁煙科学 vol.2(3) 2008.08禁煙科学 vol.2(2) 2008.04禁煙科学 vol.2(1) 2008.01

■禁煙科学 vol.2(3) 2008.08

    pdf(3915kbyte) :http://www.jascs.jp/jascs_kaiin/kinen_kagaku/006_2008/kinen_kagaku_02-3.pdf
     
 
【原著】日本における禁煙科学の萌芽
        −史的考察−
森岡 聖次
 
【原著】喫煙の健康への影響に関する知識と関心度
        アンケート調査
和田 啓道
長谷川 浩二
 
【原著】学校敷地内禁煙化と教職員のタバコに対する意識および態度
        −敷地内禁煙実施校と未実施校との比較研究−
清原康介
 
【原著】
就学前後喫煙防止教材配布校における小学5年生の喫煙に関する質問票調査
加藤秀子
 
【原著】たばこ増税が総税収に及ぼす影響の推計
        〜コンジョイント分析に基づく推計
五十嵐中
       
【原著】日本における禁煙科学の萌芽
        −史的考察−
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著者名:森岡 聖次*1
所属機関名:*1和歌山県湯浅保健所

背景:わが国の禁煙科学は平山 雄らにより活性化されたが、その端緒は明らかでない。科学論文による萌芽時期を特定するため、本研究を実施した。
方法:日本医事新報を1921年の創刊号から2007年末(4366号)まで総覧した。
結果:357号(1929年)に禁煙法に関する質疑が掲載されたのをはじめに、1936年には喫煙と歯牙への影響に関する医学論争が、1944年には喫煙と戦力に関する調査研究が掲載された。1950年から1989年までには禁煙科学論文が23篇、1990年以降は40篇以上が確認された。
結論:日本における禁煙科学は、戦前に萌芽しており、遅くとも1930年代には複数の研究が行われていた。
       
【原著】喫煙の健康への影響に関する知識と関心度
        アンケート調査
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著者名: 和田 啓道*1、長谷川 浩二*1、寺嶋幸子*2、伊藤知明*2、飯田夕子*1、北岡修二*3、佐藤哲子*1、中野為夫*4、島津章*1、高橋裕子*5
所属機関名: *1(独)国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター、*2(独)国立病院機構 京都医療センター 外来看護部、*3(独)国立病院機構 京都医療センター 健診センター、*4(独)国立病院機構 京都医療センター 循環器科、*5奈良女子大学 保健管理センター

背景:喫煙者を禁煙に導くためには行動変容理論が有効と考えるがその第一歩は気づきの(awareness)のレベルを高め、必要な情報量を増やし関心を高めることである。そのためには喫煙に関する害の中でどのような事項に関心及び知識があるのかを知ることは重要である。
方法:当院の健診センターもしくは循環器外来を受診した喫煙者と非喫煙者に喫煙の健康被害に関する13項目についてそれぞれ知識度(3点満点)と関心度(5点満点)をアンケート調査し、喫煙者と非喫煙者において比較検討した。
結果:アンケート参加者は92名で、内、喫煙者25名、非喫煙者は67名(過去の喫煙歴ある25名含む)であった。街ぐるみの禁煙の効果、糖尿病発症リスク、創傷治癒への影響については喫煙者、非喫煙者ともに知識度が他の項目より低かった。しかしいずれの項目についても喫煙者と非喫煙者の間に知識度の差はなかった。関心度に関しては、どの項目についても喫煙者において非喫煙者より低かった。特に街ぐるみの禁煙の効果、出入口付近の喫煙の害についての関心度は、有意に(p<0.01)喫煙者において非喫煙者より低かった。街ぐるみの禁煙により心筋梗塞発症がほぼ半減するということについては喫煙者、非喫煙者ともに知識度に比して関心度が高かったが、両者を比較すると喫煙者の方が有意に(p<0.05)低かった。
結論:非喫煙者に比べて現在喫煙者では全般に関心度が低く、特に受動喫煙の健康被害においてはこの差が顕著であった。現在喫煙者と非喫煙者の間に健康被害に関する知識レベルに差はなかったが、街ぐるみの禁煙の有効性や喫煙の糖尿病発症リスクなどあまり知られていない項目が明らかとなった。これらについては今後認知度を高めるために情報発信していく必要があると考えられた。
       
【原著】学校敷地内禁煙化と教職員のタバコに対する意識および態度
        −敷地内禁煙実施校と未実施校との比較研究−
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著者名: 清原康介*1、井谷百合*2、松本善孝*2、高橋裕子*3
所属機関名: *1京都大学医学研究科社会健康医学系専攻予防医療学分野、*2奈良市保健所、*3奈良女子大学保健管理センター

背景:学校の敷地内禁煙化が教職員の喫煙に対する意識や態度にどう寄与するか、我が国における報告はほとんどない。そこで、敷地内禁煙実施校所属の教員(実施群)と未実施校所属の教員(未実施群)とで喫煙に対する意識や態度に差があるか調査を行った。
方法:奈良市の公立小、中、高等学校全70校の教員1748人を対象に、2007年1月に自記式の質問紙調査を実施した。調査項目は過去1ヶ月間の学校内での受動喫煙の経験、喫煙状況、喫煙者の喫煙本数、喫煙防止授業の経験、敷地内禁煙化に対する意識とした。各項目を所属校の敷地内禁煙化状況別に集計し、χ2検定を行った。有意水準は5%とした。
結果:協力が得られた69校中、敷地内禁煙実施校は8校であり、実施群は168人、未実施群は1235人であった。過去1ヶ月間に受動喫煙があった者は、実施群の3.6%、未実施群の37.9%であり有意な差がみられた(p<0.001)。喫煙状況は、実施群は過去喫煙者21.4%、現在喫煙者7.1%であったのに対し、未実施群は過去喫煙者15.6%、現在喫煙者13.0%であり、有意な差が見られた(p=0.028)。喫煙防止授業を行った経験がある者は実施群の60.9%、未実施群の51.3%であり、有意な差が見られた(p=0.022)。学校の敷地内禁煙化に対しては非喫煙者のほうが喫煙者より肯定的な者が多かったが、喫煙者、非喫煙者ともに実施群のほうが敷地内禁煙に肯定的な傾向がみられた(非喫煙者:p<0.001、喫煙者:p=0.011)。
結論:本調査結果より、学校の敷地内禁煙化は教職員の受動および能動喫煙率の低下や喫煙防止授業実施の促進に寄与すること、また、無煙環境は非喫煙者のみならず喫煙者にも容認しうる職場であることが示唆された。
       
【原著】就学前後喫煙防止教材配布校における
               小学5年生の喫煙に関する質問票調査
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著者名: 加藤秀子*1、中山健夫*1、高橋裕子*2
所属機関名: *1京都大学大学院医学研究科社会健康医学、2*奈良女子大学 保健管理センター

背景:奈良県は奈良県教育委員会のもとに2003年度から3年間、奈良県下の全ての小学1年生に就学前後喫煙防止教育教材および副読本(絵本教材)を配布した。これは日本における最初の、行政単位での小学校低学年への喫煙防止教育の実施であった。本研究は当時教材を配布した小学校において、小学校5年生児童を対象に、喫煙に関する知識と意識および喫煙行動の現状を調査したものである。
方法: 2007年10月から11月に、調査に協力の得られた奈良市立小学校に在籍する小学校5年生児童2422人を対象とした無記名自記式質問票による横断調査を実施した。調査項目は選択回答による性別および家族の喫煙状況、喫煙の害や止める方法についての知識、喫煙に対する意識、喫煙行動(経験の有無)、絵本教材を覚えているかどうかと、たばこについて家族と話したこと、たばこについて知りたいことに関する自由記載であった。
結果:解析対象となった2334人のうち「もしもだれかからたばこを吸おうよとすすめられたら、どうすると思いますか」の問いに対し、1420人(61.0%)の児童が「『たばこは吸いたくない』と断ると思う」と回答し、654人(28.0%)の児童が「体に良くないのですすめた人にも『たばこを吸わないで欲しい』と言ってみる」と回答しており、対象児童の多くは喫煙に対して否定的な認識をもっていた。また、喫煙の依存性については2176人(93.5%)の児童が「知っている」と回答しており、対象者の多くが喫煙の害について既にある程度の知識を有することが明らかになった。喫煙経験のある児童は99人(4.2%)、喫煙の誘いを受けたことのある児童は189人(8.1%)であった。自由記載欄には、高学年児童の喫煙の害に関するより掘り下げた理解を求める内容が記載されていた。絵本教材を「覚えている」と回答した児童は全体で790人(33.9%)であった。
結論:対象となった5年生児童の喫煙に対する態度は概して否定的であり、喫煙防止への関心も高いことが示されていた。高学年児童のニーズに応じた現行喫煙防止教育の充実と、より低年齢層を対象とした喫煙防止教育の可能性についてさらに検討を進めることが望まれる。
       
【原著】たばこ増税が総税収に及ぼす影響の推計
        〜コンジョイント分析に基づく推計
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著者名:五十嵐中*1、 池田俊也*2、後藤励*3、清原康介*4、三浦秀史*5、高橋裕子*6、西村周三*7
所属機関名:*1東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学寄附講座、*2国際医療福祉大学薬学部、*3甲南大学経済学部、*4京都大学大学院医学研究科、*5禁煙マラソン、*6奈良女子大学保健管理センター、*7京都大学大学院経済学研究科

たばこの増税は未成年の喫煙開始を防止し、たばこ関連疾患に関する医療費や所得・労働力・税収の損失などの健康面の損失、火災に伴う損失、清掃費用など環境面の損失、喫煙時間分の労働力の損失など様々な社会的損失も防止する。Gotoらが行ったたばこ増税に関するコンジョイント分析に基づく禁煙成功率を基に、たばこ増税が税収全体におよぼす短期影響および長期影響を推計した。分析の基本方針として可能な限り公表されているデータを用い、パラメータの数値が確定出来ない場合は、税収が過大推計とならないように(税収が小さくなるように)数値の設定を行った。禁煙開始後1年以上が経過した際の長期再喫煙率をモデルに組み込んだ上、禁煙と節煙の価格弾力性が別個に算出されているデータを用いて節煙効果も組み込んでの需要変動および税収額を算出した。
ベースライン推計の結果では、2009年1月1日に値上げを行った場合の税収のピークは2009年もしくは2010年で、一箱500円の場合は2009年の2兆3800億円・1000円ならば2010年の3兆600億円(据え置きの場合と比較した税収増加分は4400億円および1兆2800億円)となった。
禁煙科学 vol.2(4) 2008.12禁煙科学 vol.2(3) 2008.08禁煙科学 vol.2(2) 2008.04禁煙科学 vol.2(1) 2008.01

■禁煙科学 vol.2(2) 2008.04

    pdf(4402kbyte) :http://www.jascs.jp/jascs_kaiin/kinen_kagaku/005_2008/kinen_kagaku_02-2.pdf
     
 
【日本禁煙科学会学会賞受賞講演】
     わが国のたばこ対策の歩みと将来の課題
           (2007年12月1日 奈良県新公会堂能楽ホール)
富永佑民
 
【リレー対談】「八重山地区世界禁煙デー」の取り組み
村上秀親
 
【原著】女子大学生の喫煙行動へのステージ理論の適用
        喫煙モデルのステージモデル
島井哲志
 
【原著】
ニコチンパッチを用いた禁煙治療の短期および長期成功率(1年禁煙率)に影響を及ぼす因子の検討
伊藤 彰
 
【短報】禁煙外来初診患者におけるうつ状態の調査
長谷川 浩二
 
【短報】たばこ問題を考える会・和歌山20年の歩み
森岡 聖次
 
【短報】タクシー全車禁煙化〜大分県内におけるタクシー乗客への調査報告
 
伊藤 裕子
       
【原著】女子大学生の喫煙行動へのステージ理論の適用
        喫煙モデルのステージモデル
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著者名: 島井哲志*1、山田冨美雄*2、大竹恵子*3
所属機関名: *1心理測定サービス健康心理学研究所、*2大阪人間科学大学人間科学部、*3東北学院大学教養部

背景:わが国では女性の喫煙率は増加したまま維持されているのが現状である。最も喫煙率の高い若い女性の喫煙率を低下させるためには、効果的な喫煙防止教育や禁煙指導が必要とされている。
目的:本研究では、女子大学生を対象に、ステージ理論が、喫煙行動の習慣化についても適用でき、ステージの推移にしたがってprosとconsが系統的に変化することを検証すること、また、ステージにともなう喫煙に関わる諸要因の変化を明らかにすることを目的とした。
方法:女子大学生192名を対象として質問紙調査を実施した。調査内容は、ステージ分類の5項目のほか、喫煙のprosとcons、喫煙の害の知識、周囲の喫煙状況、性格特性および刺激希求性であった。
結果:結果は、前熟考期の集団が多かったもののステージ理論が喫煙行動の習慣化にも適応できること、また、prosとconsがステージにともない系統的に変化することを示した。さらに、ステージごとの喫煙関連の要因や心理学的要因から、各ステージの特徴が明らかになった。すなわち、熟考期・準備期では喫煙の利益を損失よりも高く見積もるようになり、喫煙の害の理解がやや不足していること、実行期では、統制性が低く刺激希求性が高い傾向にあり、周囲に多くいる同性の喫煙者の影響を受けていると考えられた。
結論:本研究はステージ理論が女子大学生の喫煙行動の習得過程にも適用できることを示した。ステージごとの特徴の分析から、それぞれのステージに適切な喫煙防止教育や禁煙指導のための基礎的資料が提供された。
       
【原著】ニコチンパッチを用いた禁煙治療の短期および
          長期成功率(1年禁煙率)に影響を及ぼす因子の検討
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著者名: 伊藤彰*1、伊藤裕子*1、三浦秀史*2、高橋裕子*32
所属機関名: *1伊藤内科医院、*2禁煙マラソン、*3奈良女子大学 保健管理センター

背景:1999年5月、ニコチンパッチは、本邦初の健康保険非適用の禁煙貼付薬として発売され、2006年6月には、ニコチン依存症の患者に限定し、一部保険適用できることとなった。その結果、より多くのニコチン依存症の禁煙希望患者に対して使用されるようになってきた。そこで、ニコチンパッチを用いた禁煙治療の短期および長期の成功率(1年禁煙率)ならびに影響する因子について検討し、今後の治療に反映させることとした。
方法:2006年6月から2007年5月に、当院にてニコチン依存症管理料を算定した105例を対象とした。検討項目は短期および1年禁煙率、患者背景や喫煙状況などの因子が禁煙率に及ぼす影響とした。
結果:禁煙治療終了時に禁煙が継続していたのは89例で、短期禁煙率は84.8%であった。それぞれの禁煙成功に及ぼす影響因子をロジスティック回帰分析にて検討したところ、TDSスコアが高いと禁煙率が低くなる傾向(オッズ比0.70、95%信頼区間2.18−8.22)を認めた。禁煙治療を開始してから1年が経過した61例のうち、1年後に禁煙継続が確認できたのでは49例で、1年禁煙率は80.3%であった。各因子を同様に検討したところ、女性で有意に1年禁煙率が低かった(オッズ比34.69、95%信頼区間1.23-971.57)。また、TDSスコアが高い群、基礎疾患のある群では禁煙率が低い傾向にあった。
結論:1年禁煙率に好影響を及ぼす因子として、男性が特定された。短期の検討では性別は有意な因子ではなかったことから、短期的には性別は禁煙率に影響を及ぼさないが、女性ではそれを維持するのが難しいことが示唆された。TDSスコアの高い群では1年禁煙率が低くなる傾向があり、ニコチン依存症の程度が高い症例では1年禁煙率が低下するのは既知の通りであった。

       
【短報】禁煙外来初診患者におけるうつ状態の調査
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著者名: 長谷川浩二*1、寺嶋幸子*2、佐藤哲子*1、井上美鈴*1、和田啓道*1、伊藤知明*2、飯田夕子*1、山陰一*1、島津章*1、高橋裕子*3
所属機関名: *1(独)国立病院機構 京都医療センター 臨床研究センター、*2(独)国立病院機構 京都医療センター 外来看護部、*3奈良女子大学 健康管理センター

背景:高血圧、糖尿病、心筋梗塞症などの生活習慣病においてうつ状態の潜在的な存在が示唆されている。喫煙習慣ならびにうつ病の存在はそれぞれ独立した心血管危険因子であると同時に、うつ病の患者は禁煙成功率が低いことが知られており、危険因子集積の原因になっている可能性がある。このような問題を解決する第一歩として喫煙者におけるうつ状態に関して検討した。
目的:本研究では、女子大学生を対象に、ステージ理論が、喫煙行動の習慣化についても適用でき、ステージの推移にしたがってprosとconsが系統的に変化することを検証すること、また、ステージにともなう喫煙に関わる諸要因の変化を明らかにすることを目的とした。
方法:精神疾患を指摘されたことのない禁煙外来初診患者30名(男26名、女4名、平均年齢61才)においてSDS(Self-rating depression scale)テストを施行し、種々のパラメーターとの相関を検討した。
結果:対象者のSDSスコアは23点から67点の範囲に分布し、1例(3%)がSDSスコア53点以上のうつ病、7例(23%)が48点以上52点以下の神経症、9例(30%)が39点以上47点以下の正常/神経症境界であった。SDSスコアが全く正常範囲にあるのは13例(43%)と半数以下であった。SDSスコアはブリンクマン指数(喫煙本数/日×年数)、喫煙開始年齢や、ニコチン依存度の指標であるFTND及びTDS点数とは有意な相関は認められなかった。しかし問診表における禁煙の自信度(%)が低いほど有意にSDSスコアが高かった(r=-0.396, p=0.0327)。
結論:うつ病と診断されていなくても喫煙患者においてうつ状態が比較的高頻度に存在することが明らかとなり、禁煙の妨げになっている可能性が示唆された。

       
【短報たばこ問題を考える会・和歌山20年の歩み
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著者名: 森岡 聖次*1*2,中川 利彦*1,笠原 悌二朗*1
所属機関名: *1たばこ問題を考える会・和歌山、*2和歌山県湯浅保健所

背景:世界禁煙ディ20周年の2007年に、1987年に設立されたたばこ問題を考える会・和歌山(以下、当会)の活動を振り返り、今後の方向性を検討した。
方法:当会の会報(1987年〜2007年;計57号)と当会が過去に学会発表した抄録を資料とした。
結果:20年間、毎年実施したのはJR和歌山駅前での世界禁煙ディ街頭啓発で、一貫して受動喫煙防止を訴えてきた。また2000年以降は、健康日本21政策の和歌山県行動計画とたばこ対策指針の策定など和歌山県の禁煙対策の進捗に伴い、たばこ対策推進協議会への参画など当会として公的な場での意見表明の機会が増加した。
結論:当会は過去20年間、市民の視点から、行える者が実施可能な方法でたばこ問題に関与してきた。たばこ問題が解決していない現在、日本のたばこ対策の推進のためにこれからも地道な歩みを続けたい。
       
【短報】
        タクシー全車禁煙化〜大分県内におけるタクシー乗客への調査報告
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著者名: 伊藤裕子*1、高橋裕子*2、清原康介*3、三浦秀史*4、住田実5*
所属機関名: *1伊藤内科医院・禁煙健康ネット大分、*2奈良女子大学 保健管理センター、*3京都大学 医学研究科社会健康医学系専攻)、*4禁煙マラソン、*5大分大学 教育福祉科学部・禁煙健康ネット大分

背景:日本で最初に全県でのタクシー全車禁煙を実施した大分県で、タクシーの乗客を対象にタクシー全車禁煙化に関する調査を実施したので報告する。
方法:大分県内でタクシー全車禁煙化が実施されて10ヶ月以上経過した地域のタクシーの乗客に車内で自記式アンケートを配布し、回答を依頼した。(Q1)「大分ではタクシーは全部、禁煙車だとご存知ですか?」の項目を本人の喫煙状況別に集計した。また(Q1)で「はい」と回答した者を対象に、(Q2)「タクシーが全部、禁煙車になってよかったと思いますか?」、(Q3)「大分での禁煙タクシーを続けて欲しいですか?」、(Q4)「タクシーの禁煙を契機に自分も禁煙しようと思いましたか?(喫煙者のみ)」の3項目につき、本人の喫煙状況別に集計した。不正回答は除外して解析には含めなかった。
結果:回答があった1890人(有効回答率96%)のうち、喫煙者は764人(40%)であった。(Q1)には喫煙者の74%、非喫煙者の71%が「はい」と回答した。(Q1)で「はい」と回答した1363人のうち、(Q2)には喫煙者の43%、非喫煙者の95%が「はい」と回答し、(Q3)には喫煙者の46%、非喫煙者の97%が「はい」と回答した。また、(Q4)には喫煙者のうち25%が「はい」と回答した。
結論:本調査結果より、大分におけるタクシーの全車禁煙は実施後およそ1年で一定の認知度を有し、喫煙する乗客の40%以上がタクシー全車禁煙を歓迎し継続を希望しているなど、好評を得ていることが明らかとなった。また喫煙者の約4分の1がタクシーの全車禁煙を契機に禁煙しようと思ったと回答しており、タクシーの禁煙化が地域住民の禁煙開始を促進する可能性が示唆された。

禁煙科学 vol.2(4) 2008.12禁煙科学 vol.2(3) 2008.08禁煙科学 vol.2(2) 2008.04禁煙科学 vol.2(1) 2008.01

■禁煙科学 vol.2(1) 2008.01   第2回 学術総会 抄録集

  pdf(315kbyte) :http://www.jascs.jp/jascs_kaiin/kinen_kagaku/004_2008/kinen_kagaku_02-1.pdf
     
 
【第2回 日本禁煙科学会 学術総会】
      2007年(平成19年)12月1日−2日
          (奈良)奈良県新公会堂
      メインテーマ:Smoke-free Environments
          創ろう! タバコの煙の無い環境を
 

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