日本禁煙科学会 第二回学術総会会長
       高橋裕子(奈良女子大学 教授)
Yuko Takahashi

 秋のもっともすがすがしい季節に、東大寺に至近の会場で日本禁煙科学会の第二回学術総会を開催させていただきますことはまことに喜ばしく、開催をご支援いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。

 2007年のWHOの標語はSmoke Free Environments(創ろう!タバコの煙の無い環境を!)でした。「子どもたちはたばこの害を受けずに育ってほしい」との願いの実現のためにはタバコの煙の無い環境が重要です。大分から始まったタクシーの全車禁煙が全国に広がるなど、日本がタバコの煙のない環境づくりに関して大きな前進を成し遂げつつあるこの時期に、第二回の学術総会を開催させていただくことを光栄に思います。

 今回の学術総会の特徴のひとつに、幅広い分野からの禁煙科学へのアプローチがあります。禁煙が一定の市民権を得た現在、禁煙のいっそうの普及に必要なものは「社会常識としてのタバコの煙のない状態」であり、そのためには医学のみならず法律・教育・心理・経済学など多方面からのアプローチを一堂に集積することが重要です。今回の学術総会では禁煙科学の新しい形として、それぞれの分野の最高峰の先生方に特別講演やシンポジウム、教育講演などに加わっていただきました。従来と異なった幅広いアプローチからの禁煙の学級的探求を堪能ください。

 禁煙科学の発展には学究的側面とともに、実地に役立つ禁煙普及方法の開発も重要です。日本禁煙科学会では、禁煙の各分野の研究グループを設立して禁煙科学の発展に資する活動を続けてきました。今回の学術総会では上記の学究的探求に加えて、職域や教育、薬剤師会など10の研究グループが分科会を開催して成果報告や討議を深めます。たとえば教育分科会では現場の小学校教諭によるプロの教育法を学びます。また職域分科会では上司や喫煙者の言い分に困らないためのマニュアル作成の準備をおこなうなど、実地に即した内容も特徴のひとつです。

 3つ目の特徴は禁煙支援者育成のための、充実した講習会にあります。沿革でも述べられていますが、1997年に提供が開始されたインターネット禁煙マラソンの社会貢献の一環として開催されてきた「全国禁煙アドバイザー育成講習会」は、今年度で42回を迎えました。日本禁煙科学会はこの流れの上に位置するものとして「禁煙も禁煙支援も楽しく」をテーマに、充実した禁煙支援講習会を提供しています。日本禁煙科学会が総力を挙げたテキスト「禁煙指導・支援者のための禁煙科学」も学術総会当日に発売されます。

 人にはだれでも、大きな可能性があります。人生に新しい可能性をもたらす禁煙を支援することは医療者としての大きな喜びをもたらしてくれます。講習会での「禁煙成功者の声」の時間には、人が自分の力で自分の人生を変えてゆくことのすばらしさと、それを支援することの楽しさを禁煙マラソンのみなさんの生の言葉から実感していただけることでしょう。

 今回の学術総会には、70題を超える優秀な一般演題の申し込みを頂戴しました。また県内外の多くのみなさまにご指導を頂戴しました。深く御礼申し上げますとともに、紅葉の奈良でお待ちしています。


日本禁煙科学会(http://www.jascs.jp/)