平成19年02月05日

JASCS通信のスタートに際しての理事長からのメッセージ

会員各位

 日本禁煙科学会専用通信網【JASCS通信】によって会員の皆さんへの案内等の配信を開始するに当たり、吉田理事長よりメッセージが届いておりますので、ご紹介いたします。

日本禁煙科学会 事務局

 日本禁煙科学会理事長の吉田修です。
 日本禁煙科学会通信のスタートに際し、禁煙と科学について、私見を述べます。

 なぜ禁煙がすすまないのか、その理由のひとつに喫煙の影響に関するエビデンスが不十分なことがあります。タバコにより生じた疾患の医療経済学的側面や喫煙および禁煙に関する心理学も、きちんとした研究はまだ行われていない現状です。いまや禁煙を推進してゆくには、その科学的裏づけの存在がもっとも重要な時期に来ていると考えます。

 さらにこの領域が学問として確立していなかったことも深く関係しています。たとえば肺がんは呼吸器で、心疾患は循環器として扱われ、タバコを軸とした視点での扱いではありませんでした。また禁煙を推進するには医学だけでなく社会学や経済学、心理学等のさまざまな分野からのアプローチが求められますが、それらすべてが集う場は従来、設けられていませんでした。それらをすべて含めたのが禁煙科学であり、そうした統合を行うことも日本禁煙科学会の重要な責務と考えます。

 なおエビデンスがないものは科学ではない、数字で表された評価がされないものは科学ではないといった誤解が一部にあることは残念なことです。科学とは難しいものではなく、非常に身近なものであり、エビデンスの有無とは関係しません。たとえば自分が関与した禁煙支援の事例から多くの人に役立つものを見出してゆく、自分が提供した喫煙防止教育の経験から、役立つ教育について何かを見出すといった作業も科学です。こうして考えると、科学とはエビデンスといった狭い手順の話ではなく、たいへんに広い活動を含有します。

 そして禁煙科学はアクション・リサーチを重視する学問でなければなりません。現場の活動に立脚し、現場の活動に役立つものを広めてゆくアクション・リサーチこそが禁煙科学の真髄です。

 日本禁煙科学会は、禁煙科学という学問を介して禁煙推進活動をおこなっている人たちを支援できると期待しています。
                                   日本禁煙科学会 理事長吉田修


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